裁決事例 平成23年11月25日裁決
申告されなかった相続人名義の預金等について、被相続人の財産であるとの明確な認識はなかったことなどから、相続税法第19条の2第5項に規定する「隠ぺい仮装行為」はないとした事例
裁決事例集 第85集
要旨
原処分庁は、被相続人の配偶者である請求人Fが相続税の申告をするに際し、相続人名義の預金等(本件預金等)を相続財産に含めずに過少申告したことについて、請求人Fには、相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第5項に規定する隠ぺい仮装行為がある旨主張する。
しかしながら、相続税法第19条の2第5項の趣旨が、相続税の申告に当たり、相続財産につき隠ぺい仮装という不正手段を用いていた場合には、その相続財産に係る相続税については、配偶者といえども他の相続人と同様に相続税を負担することとなることによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な課税の実現を確保しようとするところにあると解されることからすると、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、同項に規定する隠ぺい仮装行為の要件が満たされると解すべきであるところ、本件の場合、請求人Fは、本件預金等が被相続人に帰属するものであることを相続税の法定申告期限までに明確に認識していたとまでは認められず、また、相続税の調査の際、調査担当者に対して虚偽答弁を行ったと評価できる事実もないことからすると、請求人Fにおいて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたということはできない。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人の取引先である冠婚葬祭業者の関連組合から請求人に対して給与として支払われた金員(本件金員)があり、給与所得の課税は適法である旨主張する。
しかしながら、本件金員は、請求人が葬祭業務を行うに際し、寝台車を運転するためには社会保険の加入が必要であったため、請求人の代理店収入の一部の金額を取引先が差し引き、この金額に相当する金額を取引先の関連組合を経由して請求人に給与という名目で支払うという形式を採ったものであると認められ、他方、請求人と同関連組合の間において、雇用契約その他これに類する契約の締結及び労務その他役務提供が行われた事実は認められず、また、請求人が葬祭業務を行うに当たって、同関連組合から具体的に指示を受けた事実も認められないから、本件金員は、給与所得としての要素を有するものとは認められず、その実質は取引先からの代理店収入の一部と認めるのが相当である。
したがって、原処分庁の主張には理由がなく、取引先からの代理店収入の一部の金額を給与所得として課税したことは相当ではない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁) 最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁)
ポイント
非居住者が日本国内で行う事業から生じた所得には、国内に恒久的施設がない限り日本における所得税は課されない。
この事例は、非居住者である請求人が行うインターネット販売において、輸入した商品の発送業務等を行うアパート及び倉庫が恒久的施設に当たるか否かが争われたものである。
要旨
請求人は、請求人が事業の用に供していた本件アパート及び本件倉庫は、在庫商品を保管し、倉庫業務を行うとともに、発送業務を行うことのみを目的とした「準備的又は補助的な性格の活動」を行う場所であるから、恒久的施設に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人が行う輸入販売の取引は、顧客の注文に応じてその都度商品を仕入れて輸入販売する形態のものではなく、あらかじめ輸入しておいた在庫商品を顧客の注文に応じて販売する形態のものであるところ、請求人が本件アパート又は本件倉庫を賃借してまで上記のような在庫販売形態を採用したのは、そうすることによって顧客の発注から納品までの期間を短縮させて顧客の需要に応えるとともに、輸入配送費用を節減することにあったものと認められるから、本件アパート及び本件倉庫は、事業の遂行及びこれによる利得の実現にとって不可欠の機能を果たすものであったということができるとともに、顧客に発送すべき商品に日本語版取扱説明書等の添付という経済的付加価値を付与する機能を有するということからすると、これらは、顧客に販売するための商品の在庫の保管という単なる倉庫の機能に留まるものではなく、事業の遂行による利得の実現にとって重要かつ必要不可欠の機能を有しているということができるのであって、本件アパート及び本件倉庫において行われる活動の全体は、本件事業にとって準備的又は補助的な範囲を超えるものというべきであるから、恒久的施設に該当する。
参照条文等
所得税法第164条第1項第1号、第165条、第168条 日S租税条約第1条、第5条、第7条
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