裁決事例 令和3年10月8日裁決

裁決事例 令和3年10月8日裁決

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令和3年10月8日裁決

請求人が不動産業者との間で締結した不動産売買契約は、「土地及び建物」と「賃貸人の地位」について別個に認識し、それら2つの財産を当該不動産売買契約の目的としたとみるのが相当であり、請求人が受領した売買代金の一部は、「賃貸人の地位」の譲渡の対価として受領した金員であると認められ、貸付けに起因する所得であることから不動産所得に該当するとした事例

裁決事例集 第125集

ポイント

 本事例は、請求人が不動産売買契約に伴い受領した売買代金について、当該不動産売買契約に定められた契約条項の内容や、契約前後の請求人及び売買契約の対象となった不動産の借主の事情を把握し、当該売買に係る契約解釈を的確に行い、請求人が受領した売買代金の一部について「賃貸人の地位」の対価として受領したと判断したものである。

要旨

 請求人は、賃貸していた不動産の賃借人が送金した金員(本件解約金相当額)は、当該不動産を含む不動産(本件不動産)の売買契約(本件売買契約)に基づく売買代金に含まれており、本件不動産の対価として請求人が譲受人から受領したものであるから譲渡所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件売買契約は、その特約条項によれば、本件不動産の所有権のみならず、本件不動産の賃貸借契約(本件賃貸借契約)に基づく賃貸人たる地位や、本件賃貸借契約の解約申入れに基づき賃借人から支払われる本件解約金相当額を受領する地位も移転させる趣旨のものと認められるところ、①本件解約金相当額の性質は、本件賃貸借契約に基づく中途解約金であること、②本件賃貸借契約が合意解約され、本件解約金相当額が支払われることが本件売買契約の締結より前に確定していたこと、③本件売買契約に付された不動産の価格が解約金とは別に形成されていたこと、及び④本件売買契約における売買代金から本件解約金相当額を除いた金額に相当する価格が、本件不動産の転売価格と均衡することが認められた。これらの諸事情からすると、本件売買契約は、本件解約金相当額を含む売買代金総額の全てを本件不動産の譲渡対価とする趣旨のものであったとは解し難い。また、本件売買契約の前に本件賃貸借契約が合意解約され中途解約金が支払われることが確定していた本件では、「賃貸人の地位」の交換価値が、本件不動産そのものの交換価値から独立した「本件解約金相当額を受領する地位」の価値として客観的に把握することができた。これらのことからすれば、請求人と譲受人は、売買された不動産と「賃貸人の地位」について、それぞれ別個の価格を認識し、それら2つの財産を本件売買契約の目的としたとみるのが相当であり、本件解約金相当額は、請求人が「賃貸人の地位」の対価として受領した金額であると認められる。そして、本件解約金相当額が、本件賃貸借契約が合意解約されることを前提として「残賃貸借期間の賃料の補償」として支払われることが確定したものであり、本件賃貸借契約に基づく賃貸人の地位に包含されるものであることからすると、請求人が受領した本件解約金相当額は、不動産の貸付けに起因して発生した所得であるといえ、不動産所得に該当する。

参照条文等

所得税法第26条第1項 所得税法第33条第1項

参考判決・裁決

福岡高裁平成30年11月27日判決(税資268号順号13213) 平成24年8月2日裁決(裁決事例集№88)

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